人生は再生の物語である。

59歳無職から還暦のリアルへ。

当たりハズレ(前編)

先週土曜日、天気が心配だったが墓参りに行った。

 

朝から雨が降っていた。

 

天気が悪いときは墓参りも避けた方がいいのだろうが

回復しそうな気配もあったし

天気によって予定を変更したくないとつい反発したくなった。

 

当初の予定より少し遅れたが妻と車で出発。

都心を横切って向かうと思ったより渋滞していなかった。

 

寺に近いいつも停める駐車場がなくなったのか見当たらないので

少し減速して探していると何とか見つかってホッとした。

 

雨は小雨が降ったりやんだりであった。

 

先に食事を済ませたからにしようと

いつもの商店街を二人でぶらついたが

入る店をなかなか決めきれない。

 

さんま定食が1200円ほどしていたのにはビックリ。

いくらなんでも・・・

 

駅前まで歩いて以前よく行ったとんかつの店にしょうかとも思ったら

残念ながら開店前。

結局、ピンとくる店がなかったので

買い物をしながら駐車場まで戻る道すがら

最初に見つけた中華の店でランチをすることにした。

 

そこはいかにもな、古い店であった。

記憶がおぼろげだが以前一度来たような気がする。

 

中華なら大きく外れることもないだろう、

と意を決して少し渋っている妻に同意を求めた。

 

私はもともと新しい店より古い店が好みだ。

 

味という点ではかなりリスクが高くなるが

最近は特に洗練された味よりも懐かしい味を食べたいのだ。

 

格別なものでなくても何となくホッとする味であれば十分である。

 

店に入ると、客は誰もいなかった。

 

この時点で浮かんだ不吉な予感は予想通り的中する。

 

もやしラーメンと半チャーハン900円。

ニラレバライス850円。

 

中華の店に入れば二人で注文するのは

麺とチャーハンのセットがあればそれを一つ、

それに定食を食べたらバランスもいい。

結局いつものように私がメニューを決めて注文すると

ほどなくもやしラーメンが届いた。

 

もやしが少ない・・・

シャキシャキしたもやしが食べたいのに・・・

しかもそれが思ったより少なくて代わりに麺が多そうだ・・・

 

食べてみると案の定パンチがなくて、なかなか箸が進まない。

 

その時点で妻に申し訳ない合図をスタート・・・

 

続いて来た半チャーハンは味がほとんどしなかった。

 

ダメ押しかよ・・・

 

さらにメインのレバニラは思い切りドロドロしていて

最初に食べることになった妻は憂鬱な表情が深くなっている。

 

こうなると私には別の義務も生じる。

 

もくもくと食べることに集中して、

『残さない』という永久目標だけは果たさねばならない。

妻が食べ残したら

満腹になる前に箸をのばして私がどんどん食べていくのだ。

 

さすがのコンビネーションともいえる

二人での無駄のない動き・・・

 

結局、私がかなりの量を担当したのでちょっと胸が苦しくなった。

 

この店に長居はできない・・・

早く外に出よう・・・

 

会計を済ませて店を出ると

妻がいきなり

 

最近イイこともしていないから・・・

 

いやイイことどころかイヤなこともしてるから・・・

 

と普段の行いを口にしたのでそれを遮って、

 

『いやどんなにイイことをしても、当たりハズレはあるから』

 

と強く言っきった。

 

もちろん自分に言い聞かせるためでもある。

 

とにかくこんな些細なことで、ひるんではいけない。

 

たまたま入った店で不味いものが出ることはよくあるのだ、

特に東京では。

 

かつては客が多かった店でも

店主が歳をとっていけば味が間違いなく落ちてくる。

若い料理人が後を継いでいればそれも挽回できるが

大半の古い店は店主一代限りだろうし

客が少なくなれば食材も鮮度を失うから

ますます味は悪くなってしまう。

 

古い店に入るなら、その覚悟もセットにしないといけない。

 

でもリスクが高いことも承知の上で

その当たりハズレも楽しむ前提で

ついつい古い店に入ってしまう。

可能性が低くてもそれだけで諦めたくないのだ。

 

その後墓参りは無事すんだ。

 

しかし最後にまたビックリするようなことが起きたのだった。

 

(つづく)